【SUSUの素 No.16『工房の祭』 | ブランドディレクター菅原の日常の中の心が動く小さな出来事を散文的に綴ったコラム】
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Writer: SALASUSUブランドディレクター菅原 裕恵HIROE SUGAWARA
こんにちは!
今回はメルマガ先行配信中の連載コラム「SUSUの素(もと)」をご紹介します。
さらっと流れていってしまうような日常の機微にこそ、どうやら「SUSUの素」が詰まっているようです。
菅原の目線を通して、SALASUSUの世界観を感じてみてくださいね。
No.16 『工房の祭』
今回のカンボジア出張のメイン目的は、工房での新商品開発。
新商品開発は、例えて言うなら「祭」
新しい挑戦が始まることでもあるし、わたしが工房に行くことで、作り手の時間の使い方、やることも変わる。ちょっとした緊張感と、非日常な高揚感がある。
昨年はカンボジア出張が叶わず、リモートで開発と生産を進め、無事に販売することができた。それは「リモートでもわたしたちできたじゃん!」という自信につながる出来事ではあったけれど、やっぱり工房で一緒にものづくりしないと感じられないことがたくさんあったな、と思い出させてくれた。
例えば、作り手たちの現場の感覚や勘から出来上がるプロセス。
わたしが布の切れ端の糸の処理を試行錯誤したけれど、うまくいかず諦め半分。その姿を見ていた作り手が「ちょっとやらせて」とやってみると、同じやり方でもぴたりと綺麗に糸が収まった。びっくり。何度やってもダメだったのに。
新しいデザインを「ちょっとやってみて」と、試作品だけ渡して作り手にお願いしてみる。具体的な縫い方など伝えていないのに、彼女は素材に触れながら、「これでできるかも」とかぎ針を持ってきて、綺麗にそのデザインを再現する。なんなら、わたしが考えていた方法よりも効率的で綺麗に仕上がった。正直なところ、「え?できるの!?」とびっくりしてしまう。やっぱり毎日手を動かし続けている人の現場の勘はすごい。
リモートでも商品開発はできたけれど、そこに足りなかったのは祭を一緒に作り上げる作り手の温度感や出来上がるものの手触り、様々なプロセスの共有。
作り手ができるかわからないけれど、やってみて、ちょっと違うよと言われて試行錯誤して、できるようになっていく。
そんな彼女たちの「学び」のプロセスや温度感は工房に一緒にいなければ感じることはできない。”リモートだから”と作り手が受け取りやすいように「きちんとした指示」「明瞭な設計」となればなるだけ効率は上がり、そして一方通行になっていた。あれ、これはもしかして彼女たちの活躍の場、そして学びのチャンスを奪っていたのかな。
わたしが工房で「いつ聞いてもいいよ」そんなスタンスで同じ空間にいると、近くに来てくれたり、ちょっとしたことも「これどう?」って確認してくれたり。やりとりの中で出てくるアイディアがあって、出来上がった時の大きな喜びを分かち合えたり。その場に一緒にいることで感じる感覚。こういうことの集まりが「仕事の喜び」だよねって思う。
教科書の中だけじゃない、日々の仕事の中にこそ学びのかけらは詰まっている。一緒に試行錯誤し、一喜一憂しているとそのことを実感できる。そうだ、わたしのやりがいはここにあったんだった。そんなことを思い出せる「祭」の時間だった。
今年はもっと祭を起こしていこうと思ってる。
『SUSUの素(もと)』
ブランドディレクター菅原裕恵の日常の中の心が動く小さな出来事を散文的に綴ったコラム。
ささやかで、個人的な目線を通して、SALASUSUの世界観を感じてみてください。
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SALASUSUブランドディレクター菅原 裕恵HIROE SUGAWARA
美術大学卒業後、東京で6年間の婦人靴のデザイナー経験を経て、2016年よりSALASUSUに参画。SALASUSUのプロダクトデザイン、ディレクションを担当。1年間の駐在のち現在はカンボジアと日本を行き来しながら、目に見えない付加価値を追求したものづくりを模索中。