【SUSUの素 No.8『いつものスープ』 | ブランドディレクター菅原の日常の中の心が動く小さな出来事を散文的に綴ったコラム】
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Writer: SALASUSUブランドディレクター菅原 裕恵HIROE SUGAWARA
こんにちは!
今回はメルマガ先行配信中の連載コラム「SUSUの素(もと)」をご紹介します。
さらっと流れていってしまうような日常の機微にこそ、どうやら「SUSUの素」が詰まっているようです。
菅原の目線を通して、SALASUSUの世界観を感じてみてくださいね。
No. 『いつものスープ』
カンボジアの工房で作り手に提供している給食。
以前はお弁当持参のこともあったけれど、作り手たちの健康面の改善と食育のために給食を始めて、今でも継続している。トレーニングの一環で始まった給食だけれど、今では作り手たちにも、スタッフにも、仲間と他愛ないおしゃべりを楽しむ大切な時間となっている。
シェムリアップのオフィスで働いていた頃のわたしも、工房に行く用事がある日は給食が楽しみ。お気に入りメニューは魚をパリッと揚げて、その上にたくさんのハーブがのって、上から甘酸っぱいソースがかかった「THE 東南アジア」な味わいと香りのする魚メニュー。あれは白いごはんもすすむ味。あとは、ゴーヤの中にひき肉を詰めた具が入った淡白なスープも美味しい。「今日の給食何かなー?お気に入りメニューだといいなー。」とワクワクしながら工房への道をバンに揺られて行く。
でも、なかなかお気に入りメニューに当たることはない。わたしはどうやら「あのメニュー」と縁があるようだ。
それは、マチュープロラッという、スイレンの茎のスープ。
魚とスイレンの茎が入った、爽やかな酸味と塩気のある淡白な味わい。
なぜかこのメニューに当たることが多い。
このスープの日は、「あ。今日も君ね。」それ以上もそれ以下もなく、期待が外れた若干残念な気持ちとともに淡々とスープとごはんを味わう。スープが「酸っぱい」ことにはじめはびっくりしたけれど、嫌いなわけじゃない。美味しくないわけじゃない。ただテンションが上がらないこのスープ。見た目も大変地味。
そんなわたしの気持ちを知ってか知らずか、いつも工房にいるスタッフは「あらー!ひろえ、昨日は魚の日だったのにー!」と満面の笑みをくれる。
いいんだ。これも美味しいんだ。
みんなで食べれば何だって美味しいんだ。
でもなんだかテンションが上がらないこのメニュー。
それなのにたまの出張で工房行ってもマチュープロラッに当たる。花やハーブを混ぜながら食べるカンボジア風つけ麺ヌンバンチョックや、パリパリの魚をチリソースで噛み締めたかったのに。ああ。もうこれはきっと何かの縁だろう。
「ニャムバーイ?」(ごはん食べた?)が日常あいさつのカンボジア。
なかなか工房に行けない日々が続くけれどあの幸せな給食の時間が待ち遠しい。
今ならあのスープを前にテンション上がりそうだ。
『SUSUの素(もと)』
ブランドディレクター菅原裕恵の日常の中の心が動く小さな出来事を散文的に綴ったコラム。
ささやかで、個人的な目線を通して、SALASUSUの世界観を感じてみてください。
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SALASUSUブランドディレクター菅原 裕恵HIROE SUGAWARA
美術大学卒業後、東京で6年間の婦人靴のデザイナー経験を経て、2016年よりSALASUSUに参画。SALASUSUのプロダクトデザイン、ディレクションを担当。1年間の駐在のち現在はカンボジアと日本を行き来しながら、目に見えない付加価値を追求したものづくりを模索中。