【SUSUの素 No.7『かごから空想するつくり手の物語』 | ブランドディレクター菅原の日常の中の心が動く小さな出来事を散文的に綴ったコラム】
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Writer: SALASUSUブランドディレクター菅原 裕恵HIROE SUGAWARA
こんにちは!
今回はメルマガ先行配信中の連載コラム「SUSUの素(もと)」をご紹介します。
さらっと流れていってしまうような日常の機微にこそ、どうやら「SUSUの素」が詰まっているようです。
菅原の目線を通して、SALASUSUの世界観を感じてみてくださいね。
No.7 『かごから空想するつくり手の物語』
かごが好き。というか、もはやかごの作り手に対するリスペクトの気持ち。
「ここまでよくぞ綺麗に」と、ため息すらもれる網目の細かさや美しさ。わたしだったら途中で間違えたらやり直せず、止めてしまうんじゃないかと思う程、均一に編み込まれた手仕事の極まり感にほれぼれする。
一方で、少し網目のずれたかごに出会うこともある。
「あー、ここまでがんばったけれど疲れちゃったのね」と、クスリと笑えるかご。作り手の気持ちを想像したり、作り方を観察したり。これも手仕事で作られたものならではの、ひとの手の感じが楽しい。
わたしのベストかごは、ロペアという木の繊維で編まれた
素晴らしく網目が細かく、ずっしりと重量感のある平たいカゴ。
着色していない自然なつやもすてき。
このかごはとはカンボジアに住んでいた頃に訪れたコンポントムの街で出会った。
レストランの横で、かごを編みながら楽しそうに集っている女性たちを見つけた。にぎやかにおしゃべりとともに、巧みに手を動かすおばちゃんたちを前に、かごを選ぶ。
たくさんある中から、ひとつひとつ、個性のあるかごをじっと、
隅々まで見つめ、これ!というひとつのかごを見つけた。
でも、残念なことに一か所だけ網目が切れていた。
それでも絶対にこのかごがいい。おばちゃんにお願いするとササっと直してくれた。
「うん。このかごがやっぱり一番いい。」
そのかごはコーヒー豆とパンの置き場所になっている。
美しいそのかごは、飾っておきたいような気持ちもある。でもかごは日常の中で使われているからこそいい。暮らしの中に溶け込んで、役割をはたしている感じ。それにそのかごを見ると、あのときのおばちゃんたちの声が聞こえてくる気がする。
わたしにとってかごは想像をひろげる仕掛け。
手仕事の裏にある作り手やストーリーの想像をかきたて、かごを選んだときの風景も思い出させてくれる。ひとの手が作り出したからこそにじみ出る作り手の人柄を想像するのも好き。
服を買う時よりも、かごを買う時の方がたのしい。
今では目に触れるだけで幸せな気持ちになる、大好きな10個のかごが家にある。
これが家にあるってほんとに幸せ。
『SUSUの素(もと)』
ブランドディレクター菅原裕恵の日常の中の心が動く小さな出来事を散文的に綴ったコラム。
ささやかで、個人的な目線を通して、SALASUSUの世界観を感じてみてください。
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SALASUSUブランドディレクター菅原 裕恵HIROE SUGAWARA
美術大学卒業後、東京で6年間の婦人靴のデザイナー経験を経て、2016年よりSALASUSUに参画。SALASUSUのプロダクトデザイン、ディレクションを担当。1年間の駐在のち現在はカンボジアと日本を行き来しながら、目に見えない付加価値を追求したものづくりを模索中。