【コラム】はたらく母のひとつの決断。
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Writer: SALASUSUスタッフ
はたらく母が
自分の生き方を自分で選択する。
シンプルなことのようで、なかなか難しい。
そんな悩むはたらく母はたくさんいるのではないでしょうか?
仕事があるから、
家事も育児もあるから、
それを理由に自分の気持ちはどこか置き去りに。
カンボジアのSALASUSU工房ではたらく母たちも
それぞれの悩みを抱えつつ、前を向いて進んでいます。
今日はSALASUSU工房ではたらく母のストーリー。
大切な場所を離れ、
新たな挑戦へと向かうひとりの作り手の決断をお届けします。
彼女の名前はSophon (ソポン)。
4歳と0歳のふたりの子を持つ、26歳。
先日、7年間働き続けたSALASUSU工房を卒業していきました。
卒業生の多くは工房を卒業した後は
学んだことを活かし、シェムリアップでの就職を目指します。
でも彼女は違いました。
彼女は工房を卒業して自分の村に帰る決断をしました。
中学1年生までしか学校に通えなかったSophon (ソポン)。
工房に来るまで彼女の家庭の生活は厳しく、毎日の食事に困るほど。
彼女も家庭のために建設現場での仕事やゴミ拾いの仕事をしていたといいます。
安定した収入がほしい。
そう思いSALASUSU工房へやってきました。
工房へ来た初日は
とにかく「怖かった」と話す彼女。
はさみを使ったことすらなく、
工房での仕事ははじめてのことだらけ。
それでも徐々に技術を身に付け
同時に「自信」も付けていきました。
そして何でも話せる友達もでき、
Sophon (ソポン)にとって工房は
仕事をする以上に大切な場になっていきました。
工房に来てから6年後、
彼女のものづくりの高いスキルが認められ
スペシャリスト(その部門でスキルが高く、新人にも指導ができる)
というポジションに応募し、無事合格することができました。
新しいポジションでの仕事は不安もありつつも、
「絶対にこの仕事をやり遂げたい」という強い思いが彼女を支えました。
がんばる工房での仕事。
そして家に帰れば彼女は母。
仕事と育児の両立にはサポートしてくれる人が不可欠です。
でも彼女の家には子どもを仕事の間みてくれる人がいませんでした。
育児をどうしていくのか。
今までは大変ながらなんとかやってきた仕事と育児の両立。
でも夫から仕事を辞めて育児に専念してほしいと言われ、
彼女は悩みました。
大切な仕事。
大切な、大好きな仲間、場所。
彼女は家族の都合で学校を中退し、
家族を支えるために仕事を始めました。
それはどこかしら彼女の意志とは違ったものだったのかもしれません。
そうせざるを得なかったから
自分の意志ではなくてもそれに従ってきた。
でも今回の彼女はもうそんな過去の彼女とは違いました。
家族の都合で仕事を辞めざるを得ないから辞めるのではなく、
夫と相談し、自分でじっくり考え、
そして最終的に村に帰ることを彼女は決めました。
最後の日。
彼女の卒業式が工房で行われました。
彼女の決意に涙する仲間たち。
Sophon (ソポン)も涙を抑えきれません。
涙、涙の卒業式でした。
家族の都合や社会システムの中で
自分の意志とは違ってもそうせざるを得なかったことが多かったSophon (ソポン)。
今回の決断は彼女にとって、正直、悔しい部分もありました。
でも7年前に工房に来る前に誰かの都合に従っていた彼女の決断とは
少し違ったものができたのではないでしょうか?
「仕方がない」から「そうしよう」へ。
少なからず自分の意志があるのと、ないのとではその決断の意味は大きく違います。
Sophon (ソポン)の今回の決断は工房の作り手たちだけでなく
どこにいたってがんばる、はたらく母の勇気になって欲しいと思います。
Sophon (ソポン)は村に帰って子育てをしつつ、
村にある小さなビジネスに挑戦していきます。
きっとまた困難にぶつかることもあると思います。
でも彼女なら乗り越えられると信じています。
7年前に村から工房にやってきた彼女とは違って
彼女には仕事の経験も、仲間も付いているのだから。
彼女のビジネスがより成長し家族を支えられるビジネスに。
そして彼女の人生を照らすビジネスに成長しますように。
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