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【SUSUの素 No.6『2歳児が風流な話』 | ブランドディレクター菅原の日常の中の心が動く小さな出来事を散文的に綴ったコラム】

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Writer: SALASUSUブランドディレクター菅原 裕恵HIROE SUGAWARA

こんにちは!
今回はメルマガ先行配信中の連載コラム「SUSUの素(もと)」をご紹介します。
さらっと流れていってしまうような日常の機微にこそ、どうやら「SUSUの素」が詰まっているようです。
菅原の目線を通して、SALASUSUの世界観を感じてみてくださいね。



No. 6『2歳児が風流な話』

家から大人の足で徒歩4分の場所に2歳の息子が通う保育園がある。もうすぐ夕方のお迎えの時間。家を出る時間ギリギリまで作業をして、後片付けもままならないまま、急いで出かける。

 

今日は雨。じめじめして、荷物が増えがちで、雨はあまり好きじゃない。小さな傘を片手に、日常の中に溶け込んだ保育園までの道を息を切らせて、まっすぐ歩く。4分もかからず園につき、どたばたと2歳児を連れて来た道をまた戻る。

 

行きと帰り。同じ道なのに全く違った風景と時間の進み方がある。このままだと永遠に家に辿り着かないんじゃないかと思う寄り道がはじまる。

 

傘と保育園の大きな荷物を抱え、憂鬱なわたしとは対照的に目を輝かせ、雨を全力で楽しむ2歳児。木の下にそっと生えている小さなきのこを見つけたり、じゃぶんと水たまり入ってみたり、ぽたぽたと草からたれ落ちるしずくを指で触ったり。彼にとっては全てが新鮮な景色らしい。

ふいに彼がしゃがみこみ、傘もささずに道のわきの排水溝をじっと見つめている。
排水溝を指さし、「おと」と一言。

 

隣にしゃがんで耳をすます。
ぴちょん、ぴたん、ちょろろろ、ぽ、ぽわん。
高い音、小さい音、遠い音・・・ちょうどいい水量と絶妙な角度が作り出すその音。
住宅街の隅の排水溝の音が、京都の古寺にある水琴窟かのような音色を響かせている気がする。それをじっと聞いている2歳児が、「なんて風流なんだ!」と驚きすら覚えつつ、じっとふたりその音に聞きほれる。

 

水の音、空の色、雨水の冷たさ。
日常のなかに当たり前にあるそれを「感じる」ことをいつしか忘れている。それを全身で感じ取っている2歳児と一緒にいる時間は、彼の感覚のおこぼれにあずかって素直にわたしも感じることができる気がする。当たり前を味わうことで「あー、こうだったよね。これっていいよね」そんな素直な気持ちに満たされる。

 

日常を素直に味わい尽くしている2歳児の感覚をのぞき見る帰り道。素直に感じることを思い出す時間をもらっている。


『SUSUの素(もと)』

ブランドディレクター菅原裕恵の日常の中の心が動く小さな出来事を散文的に綴ったコラム。
ささやかで、個人的な目線を通して、SALASUSUの世界観を感じてみてください。
最新話はSALASUSUメールマガジンにて毎月2回、金曜夜20時ごろ先行配信。

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Writer

SALASUSUブランドディレクター菅原 裕恵HIROE SUGAWARA

美術大学卒業後、東京で6年間の婦人靴のデザイナー経験を経て、2016年よりSALASUSUに参画。SALASUSUのプロダクトデザイン、ディレクションを担当。1年間の駐在のち現在はカンボジアと日本を行き来しながら、目に見えない付加価値を追求したものづくりを模索中。

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